辞書はどうやって作られるのか――。
言葉は人と人をつなぐ大切な架け橋。その言葉を集め、一冊の辞書を編む――。
NHKドラマ『舟を編む』は、辞書作りに情熱を注ぐ人々の姿を丁寧に描いた物語です。
原作は三浦しをんの同名小説。2013年に映画化され話題を呼びましたが、NHK版ドラマでも丁寧な描写と豪華キャストが注目を集めています。辞書は、ただの言葉の集まりではありません。一つひとつの言葉には人の思いが宿り、誰かの人生をつなぐ「舟」となります。日常ではなかなか触れることのない辞書編集の世界を、感動的かつ人間味あふれる物語として届けてくれます。
今回は読書、エンタメ好きの私がおすすめする一作をご紹介します。
原作『舟を編む』
著者:三浦しをん
出版:光文社(2009年)
ジャンル:小説/ヒューマンドラマ
第5回本屋大賞受賞
どんな話?
主人公は出版社「玄武書房」に勤める冴えない営業マン 馬締光也(まじめ みつや)。
言葉への鋭い感性を見抜かれ、辞書編集部へ異動します。そこで彼は、新しい国語辞典 『大渡海(だいとかい)』 の編纂に取り組むことになります。
編集部には、軽妙な同僚 西岡正志、定年間近のベテラン 荒木公平、辞書学の権威である 松本先生 ら、個性豊かな仲間たちがいます。
彼らと共に、言葉を一つひとつ選び、定義を練り上げ、膨大なカードを積み重ねていく日々。辞書作りは地味で終わりが見えない仕事ですが、「人と人をつなぐ舟を編む」という信念のもと進められていきます。
馬締は下宿先で 林香具矢 と出会い、恋をし、不器用ながらも誠実に愛を育んでいきます。やがて二人は結婚し、馬締は香具矢の支えを受けながら辞書編纂にさらに没頭していきます。
物語は13年に及ぶ「大渡海」完成までの歳月を描きます。
途中で仲間が去ったり、新しい人材(天童充や岸辺みどりなど)が加わったり、出版社の方針で危機に陥ることもあります。しかし馬締たちは言葉への情熱を失わず、最終的に「大渡海」を世に送り出すことに成功します。
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私は単行本で読みましたが、装丁がまさに完成された「大渡海」を思わせるデザインが素敵です。
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逆に文庫本は色鮮やかなデザインです。
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映画『舟を編む』
公開:2013年
監督:石井裕也
第37回日本アカデミー賞 最優秀作品賞を受賞
映画版のここがいい!
1. 辞書づくりを題材にしたユニークさ
辞書編纂という、一見地味で時間のかかる仕事をドラマチックに描いた点が新鮮。
言葉を一つひとつすくい上げて編んでいく作業の尊さを丁寧に映し出しています。
2. キャストの化学反応
松田龍平演じる不器用で純朴な馬締と、オダギリジョー演じる軽妙で社交的な西岡の対比が見事。
宮﨑あおいの温かく芯のある存在感が、作品に柔らかな人間味を加えています。
小林薫や加藤剛といったベテラン俳優が、言葉に人生を捧げた人々の深みを表現。
3. 人間ドラマとしての普遍性
「言葉とは何か」「人はなぜ伝えようとするのか」というテーマを軸に、登場人物それぞれが成長していく姿が描かれる。恋愛、友情、仕事のやりがいといった誰もが共感できる要素が散りばめられている。
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NHKドラマ『舟を編む』
放送期間:2024年2月~3月(全10回)
主題歌:あいみょん「会いに行くのに」
ドラマ版のここがいい!
1. 時間をかけてじっくり描ける強み
原作小説が持つ「十数年にわたる物語の厚み」を、映画より丁寧に展開できる。
編集部での言葉のやり取りや、登場人物の内面の変化が細やかに描かれるため、じわじわと心に沁みる。
2. 登場人物の群像劇が深まる
馬締や西岡だけでなく、香具矢、荒木、松本先生、後輩の天童や岸辺といった周辺キャラにもスポットが当たり、それぞれの葛藤や人生が描かれる。
「辞書をつくる」という一見地味な作業に、関わる人間たちの情熱が重なっていく様子が立体的に見えてくる。
3. 言葉への愛情をじっくり表現
ドラマならではの演出で、一つの言葉をどう定義するかを議論する場面が多く盛り込まれ、視聴者も「言葉の奥深さ」を体感できる。
「舟を編む」というタイトルの意味(辞書は人を言葉の海へ導く舟である)が、より強く響く構成。
4. 恋愛・生活の描写が自然で温かい
香具矢との恋愛や結婚生活が丁寧に描かれ、馬締の成長が実感しやすい。
下宿「早雲荘」での人情味あふれるやり取りも、じっくりと雰囲気を楽しめる。
5. ドラマならではの余韻とリアリティ
辞書完成に至るまでの長い時間を、連続ドラマの「積み重ね」で追体験できる。
一つの言葉を積み上げていく日々の地道さが、観ている側にもリアルに伝わる。
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映画版とドラマ版のキャスト比較
どちらのキャストも豪華な方々が勢ぞろい。同じ役でも俳優さんが違うとまた違った味わいが出ていい。
また、映画版では控えめな役がドラマ版では目立つ役になっていたりとそれぞれに役の際立たせ方も見どころ。
役名 | 映画版 | ドラマ版 |
馬締光也 | 松田龍平 | 野田洋次郎(RADWIMPS) |
林香具矢 | 宮崎あおい | 美村里江 |
岸辺みどり | 黒木華 | 池田エライザ |
荒木公平 | 小林薫 | 岩松了 |
西岡正志 | オダギリジョー | 向井理 |
佐々木薫 | 渡辺美佐子 | 渡辺真起子 |
天童充 | 渡辺佑太朗 | 前田旺志郎 |
松本朋佑 | 加藤剛 | 柴田恭兵 |
まとめ
『舟を編む』は、「言葉」という普段当たり前に使っているものの尊さを改めて感じさせてくれる作品です。静かで地道な辞書作りの中に、人間の真摯さや情熱がぎゅっと詰まっていて、読後には心が温かくなるはず。映画やドラマから入っても良いし、原作小説からじっくり味わうのもおすすめです。
ちなみに私は原作→映画→ドラマの順で見ました!この順番でいいところは登場人物を想像で思い描いていたところに映画やドラマでそのぼんやりしていた部分が具現化されるところです。
あぁ、この役はこの俳優さんかぁ、合ってる~とか楽しめるところが面白いですね。
今の時代、何かを調べるときはスマホでチャチャっとが主流で辞書を引いて調べることは減ってきています。
でもネットではその言葉の意味しか出てこないけど、辞書を引いたらその言葉だけではなく、その言葉の前や後の言葉にも自然と目が行くでしょう。へぇ、こんな言葉があるんだ、こんな意味なんだとそれこそ言葉を味わう時間が得られることでしょう。
今年の春に息子の授業参観でちょうど辞書の引き方をやっていました。辞書の引き方を習ってもこの先使うのかなと思いましたが、今思うとやっぱり必要だな思います。
時にはネットでチャチャっとも必要だと思いますが、こんな時代だからこそ辞書をゆっくり開いて贅沢な時間を味わうことの大切さを教えてもらった気がします。
ぜひ辞書作りの世界を味わってもらいたいなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。